はじめに
小ぃさい赤ちゃんに対してお母さんたちは、長期的に母乳分泌を維持しなければならなくなります。心の整理も体も落ち着かない状態で母乳育児がはじまります。搾乳を義務感に強く感じてしまい辛くなることもあります。でも、そんな状況になれば誰だって辛いので、頑張りすぎないでほしいと思います。なので、みんなで支え、お母さんの決断に歩調に合わせられることを願って書いてます。
母乳分泌の生理と搾乳のポイントを理解していると、落ち着いて効果的に行える可能性が高まります。参考になれば幸いです。
早産児の栄養
超低出生体重児に生後24時間以内に経腸栄養を開始すると、中心静脈栄養期間が短くなること、3歳での神経学的予後が改善することなどが分かっている。また、母乳は人工乳と比較して壊死性腸炎の発生が有意に少ないのみならず、腹部膨満の軽減や栄養吸収率の面でも優れている。そのため、母乳は経腸栄養を円滑に進めるために最良で貴重な贈り物すぎて、赤ちゃんは感謝しきれないんです。NICUでは持参された母乳をただちに使用する場合もありますが、冷凍庫保存後に自然解凍してから使用する場合が多いです。
搾乳の開始と回数
搾乳の開始はできるだけ早い方が望ましいとされています(6時間以内)。夜間も含めて1日8回以上。1回20分程度とされています。早産児にとって、免疫や消化をたすけるために初乳は大切であるので、少量でも赤ちゃんには貴重な贈り物になります。はじめはにじむ程度でもその先の母乳分泌増加に繋がります。産後2週間までは7回以上の搾乳を行い、電動搾乳器を使用する場合は手での搾乳を追加することで分泌量の増加が期待できます。また、電動搾乳器のダブルポンプの方が手動搾乳器よりも搾乳量が増え効率的であるとされています。お母さんが快適と感じる方法で行います。2週間以降は1日4回~5回以上の搾乳を行い、生活のリズムを大切にして、習慣化できるとGOODです。心も体も疲れ切っていると思いますが、特に質の良い睡眠をとってほしいです。また、リラックスできる工夫(音楽、食べ物、飲み物、スキンシップ、環境、においなど)は何か少しづつ変えられるといいと思います。
※初乳 :産後3~5日頃までに搾乳した母乳
移行乳:産後6~14日頃までに搾乳そた母乳
成乳 :移行乳以降
保存方法と期間(NICU)
新鮮な搾母乳はただちに冷蔵が理想的。冷蔵庫内では2日以内が理想的で、強化母乳の場合は24時間以内。冷凍庫内では3ヵ月(1ヵ月が理想的)。解凍母乳は再度解凍することは禁となります。室温25℃以下で搾母乳の細菌の繁殖はごくわずかで、3時間は変化がないといわれています。
搾乳の継続
プロラクチンとオキシトシンが乳汁産生と放出のために重要な役割を果たす。
プロラクチンは乳汁を産生します。プロラクチン濃度は分娩直後が最も高く、乳頭の刺激のたびに一過性に上昇します。授乳しなければ分娩後7日目までに妊娠していない時の濃度まで低下します。なので、分娩後できるだけ早期に搾乳する必要があります。プロラクチンはリラックスさせる効果があり、夜間に濃度が高くなるため、夜間の搾乳はプロラクチンの分泌をさらに高める効果があります。
オキシトシンは、搾乳による乳頭刺激で分泌され乳汁を送り出す作用があります。児の吸う刺激で分泌が促進されますが、直接の刺激だけではなく児のことを考えたり、泣き声を聞いたり、においを嗅いだり、五感を使って存在を感じることでも分泌が促進されると言われています。逆に、痛みや不快な感情はオキシトシンの分泌を下げるようで、搾乳時に痛みがあれば母乳分泌は減少することもあるようです。なので、搾乳器の乳頭口のサイズや圧は適切なのかなど快適な方法で行うといいようです。
乳汁産生の量は、乳房がどれだけ「空っぽ」になったかが目安となる。乳汁が長時間乳房にたまると、乳汁産生は低下していきます。「空っぽ」に近づくまで搾乳すると、乳汁分泌の維持に有利に働くようです。さらに、「空っぽ」に近づいた方が、母乳中の脂肪量が増えるため、早産児の体重UPに有効となるようです。
母乳の脂肪成分には、脳の神経伝達や肺の機能を適切にするために必要な成分を含んでいるため、最後まで搾乳して「後乳」を与えることが重要だとのことです。
搾乳後の体のケア(軽運動)
搾乳中は下を向いていることが多く、肩こりや背中が張りやすい姿勢をとります。搾乳後に軽運動やストレッチなどで姿勢のケアを行うことで体も気持ちもスッキリできると思います。ポイントは胸(胸郭)を開くことと骨盤を立てることです。また、呼吸をゆっくり行うことで自律神経を整える効果も期待できます。ポイントができていればどんな方法でもいいと思いますが、ここでは一つ紹介します。
まとめ
やさしさや喜びをちょっとでも感じられることがとても大切な時期だと思います。お父さんは精神的にも物理的にもサポートできるとお母さんにも赤ちゃんにも安心できる良い効果が期待できます。かなり大変な時期ではありますが、赤ちゃんの日々少しずつ変化する表情や動きなどに喜びを感じ、家族で共有することがいいかと思います。こんな小さな手でしたが、現在では第一関節まで大きくなりました。じわじわですが、ご両親の元気は必ず明日、明後日…と繋がる先の成長に最高の栄養を与えています。
<参考文献>
滋田泰子,搾乳のポイント,with NEO 2022 vol.35 no.3(409)
斎藤朋子,小児科編Q&A,周産期医学 Vol.52 増刊号2022
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